2012年10月23日 (火)

二風堂々

エルガー作曲の威風堂々はいい曲だ。

エルガーは威風堂々という名前の行進曲を6曲作っているが、なかでも有名なのは第一番で、この曲の中間部は「希望と栄光の国」として歌詞がつけられ、第二の英国国歌といわれる。

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音楽好きの方は、毎年夏にロンドンで行われるクラシックの祭典「BBCプロムス」の最後に必ず演奏されることをご存知だろう。生き生きと覇気に富んだ前半(後半も)部分と中間部の崇高な旋律が魅力的で、月並みな言葉だが、まさに英国の伝統と風格を感じる名曲だ。

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この秋、威風堂々を2回立て続けに聴く機会を得た。しかも、同じオーケストラ、そして同じホールなのである。オーケストラは東京フィルハーモニー。ホールは初台のオペラシティである。

二つともご招待コンサートで、一つは京王電鉄主催の京王音楽祭。これは正確にはチャリティー。もう一つは某給食産業の周年コンサートであった。京王音楽祭は「英国音楽特集」でなかなか玄人好み。ヘンデルからビートルズまで、英国音学の系譜が奏でられる。目玉はブリテンの「ヘンリー・パーセルの主題による変奏曲とフーガ」。つまり「青少年のための管弦楽入門」である。これは名前にそぐわない聴き応えのある作品。

二つ目の招待コンサートは名曲シリーズといった趣だが、プログラムの目玉は、仲道郁代ピアノによる、チャイコフスキーの協奏曲第一番であった。

さて、肝心の威風堂々。要するに指揮者だけが違うのだ。一つ目は我らがマエストロ曽我大介。二つ目は、当日の東京フィルの桂冠指揮者である尾高忠明である。

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オケもホールも同じだから、必然的に聴き較べることになる。どちらが上手かったか、などという愚問はおいておき、これは好みの問題であろう。

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曽我大介は生き生きと躍動感溢れる指揮であった。尾高忠明は英国音楽の権威であり、特にエルガーには定評もあり流石に手馴れた演奏。テンポも比較的遅めにとって、悠々とした音楽であった。想像の域を超えないコメント(笑)なのかもしれないが。

威風堂々ならぬ二風堂々。こうして二つの演奏を聴き較べてみるのも一興である。


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2012年6月 5日 (火)

星はヒカリエ(笑)

本題に入る前に、報告をひとつ。報告といっても極めてプライベートなことである。父親がまた入院してしまった。土曜日の朝に呼吸の調子が悪くなり、ついでに腰を痛め、しばらく様子を見ていたた。私が仕事から帰宅した夕刻くらいから一層苦しくなり、救急車を呼んで病院に運び込んだのだ。幸いに危篤状態だった前2回に較べると軽症のようだが肺炎を併発していて、予断はできない。また、本人にとっても、家族にとっても闘病生活が始まるのだ。この1年、半分は入院生活を強いられた父は気の毒だが、毎日お見舞いに行く私を含めた家族の負担も大変大きい。高齢者社会の辛さは、経験してみないと分からないものだ。

さて、暗い話はこの位にして、本来は明るい話を書きたかった。新橋のミュージックレストランなるものを初体験した。その名は「アルテリーベ」。声楽家がクラシックを中心とした愉しい歌を歌い、客はビアグラスを傾け、時には一緒に歌う・・・・・というドイツ料理のビアレストランである。

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実は、ソプラノ歌手の浪川佳代さんの自称追っかけをやっていて(笑)、先日、同じくミュージックレストランの銀座「ライオン」に続き、ここアルテリーベにやってきたのだ。なぜ、浪川さんの追っかけになったか、自分でも良く分からないのだが、冗談で言っていたら、いつの間にかみなされてしまったらしい。まあ、追っかけでもそうでなくても、余り大差はないのだから良しとしよう(笑)。

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この日はマルガツで歌友のムッシュ一夫、おそらく30年ぶりくらいに再会する中高時代の友人Iさん、そして以前居た会社の後輩かつ歌友のFさんとの4人編成。Iさんはムッシュ一夫とIさんは初対面だが、フェイスブックが引き合わせた不思議なご縁なのだ。歌も会話も弾み本当に愉しかった。

アルテリーベハは、私に言わせると「視聴者参加型レストラン」。歌を一緒に歌うのは当然として、客が舞台に上がっての「ラインダンス」には驚いた。果ては会場全員で縦列を作っての「歌行進」まである。本当にビックリした。銀座「ライオン」はここまではやらない。聞くところによると、ここアルテリーベは過去何回も閉店の憂き目をみたのだが、そのたびにファンの要請で復活、いまは個人のファン数名がスポンサーになる「有限責任事業組合」としてスタートしたのだという。だから、お客さんを愉しませる精神が浸透しているのだろう。

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もちろん、浪川さんの歌も素晴らしい。何が素晴らしいかって?まず、コスチューム(笑)。ドイツ風というか、チロル風というか・・・・コスプレまがいで可愛らしい。いや、コスプレは浪川さん自身が言っていることなので、ここに書いても良いのだ。まったく浪川さんは愉快な人だ。

もちろん歌も忘れてはならない。素晴らしい持ち歌を沢山ご披露してくれた。「ライオン」でも歌ったと思うが、「私のお父さん」。そして、オペラ「トスカ」から、テノールの名アリア「星は光ぬ」と並び、人気絶大のタイトルロールのアリア「歌に生き、恋に生き」の絶唱は見事!

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そうそう、「星は光ぬ」で思い出したが、先週末渋谷「ヒカリエ」を視察した。開業して一ヶ月余り。すこしは落ち着いたかと思い、見に出かけたのだが、まだまだ大変な混みようだった。このヒカリエは「大人の女性のためのショッピング施設」と銘打つだけに、ターゲットを絞り込んだ潔さを感じた。8フロアのうち空いているのはコスメチックの階だけで、あとは大盛況。特に雑貨のフロアは歩くのにも苦労するほどの混みようだ。ショップの一つ一つがなかなかユニークで、見ていて愉しい。

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レストラン街も充実していて、大人の女性のオーガニック志向を反映した店が集められていた。店ごとのスペースの囲いが極力取り払われていてオープンなのも良い。伊勢うどんまであるのには驚いた。地下のスィーツも大人気で、サダハル・アオキのショップは大判マカロン目当ての女性で長蛇の列だ。

私は、友人が勧めてくれた京都「然花抄院」の生成りカステラを買い求めた。

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後で考えたことだが、ヒカリエの前は東急文化会館だった。この屋上には有名な五島プラネタリウムがあったのだ。意外に、ヒカリエのネーミングは「星は光ぬ」から来ているんじゃないかなあ。

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2012年5月14日 (月)

3つの「新世界」を聴く

ここ数ヶ月で3つの「新世界」を聴いた。

ドヴォルザークの交響曲第9番は「新世界」の名前でも有名な超通俗名曲である。新世界をコンサートで聴くなんて、おそらく数十年振りである。立て続けに3回連続というのも極めて異例のことだ。しかし、演奏は三者三様。これがクラシック音楽の愉しいところである。

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一つ目は、3月2日新日本フィルの定期演奏会。そもそも、定演でこんな通俗曲が採り上げられるのは珍しい。定演の演目は、ちょっと奇をてらった通好みの曲が多いのだ。通俗曲はだいたい「なんちゃら名曲コンサート」といった枠で演奏されることが多い。通俗、通俗と連呼しているが、通俗曲=レベルが低いということではない。今回新世界を続けて聴き、やはり素晴らしい名曲だなと感じ入ったのである。

新日フィルの指揮はスピノジ。フランスの中堅指揮者である。演奏は才気煥発というか、何かをやってくれるのではないか・・・と飽きさせない。小柄な身体をフル回転させて、スピード感よく前進する。その新鮮さが心地よいのである。これまでの旧弊にとらわれない解釈というか、そうだからといって奇をてらうことなく、そこには新しいドヴォルザークの音楽が鳴っている。

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二つ目は、翌週の3月9日、大友直人指揮@初台オペラシティホール。実はこのコンサートは一般に公開されたものではなく、大手町にある某大手総合商社主催のプライベートコンサートだったのだ。商社のお取引様や、外国の大使?など、招待客は多士済々。私はコンサートを企画・運営している人物と歌友で、お招きいただけたのだった。

もう一つ、面白いのは、オーケストラが特別なこと。「一夜限りのスペシャルオーケストラ」と銘打った企画で、在京を中心とした11のプロオケのトップ奏者を中心に臨時編成された、なんとも贅沢なオーケストラなのだ。資金的にも大手企業でなくては出来ないイベントだ。

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大友の指揮は、まことにオーソドックスな演奏。我々の期待を裏切らない安堵感と豊かさがある。「新世界」とはこういう演奏で聴きたいと思わせる。実は、先のスピノジの新日本フィルのチェロ奏者がこのコンサートにも出演していた。彼とはフェイスブックで顔友なのだが、彼曰く「安心して弾けた」演奏だったようだ。一流奏者とはいえ臨時編成なので、合わせも大変だろうと思うが、アンサンブルは整っていたし、とても立派な演奏だった。

さて、最後はチョン・ミョンフン指揮の東京フィルハーモニー。この日は東フィル創立100周年特別演奏会だった(ご招待だが)。はじめて知ったのだが、東フィルは日本最古のオーケストラで、発祥はなんと名古屋の松坂屋の少年音楽隊だったという。驚きである。本来は昨年が100周年だったが、大震災で記念演奏会は今年に延期されたとの事。

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チョンの指揮は、ダイナミズムに富み、鋭角的でコントラストがハッキリしていること。少なくとも、私の好みとは違うが、とても力感溢れる演奏だった。きっと、オケに対しても指導は厳しいのだろうな。東フィルは新星日響と合併したため楽団員は150人にも及ぶ、日本最大のオーケストラである。ざっと数えただけでも、コントラバスが12人もいたのだから、第一バイオリンは20挺はあったのだろうか。トゥッティで弓が林、いや森のごとく林立する様は壮観である。

この日の呼び物は、150人編成による、ラヴェルのボレロ。サントリーホールのP席に陣取ったバンダは20人もいただろうか。フィナーレの豪壮なことといったら、おそらく空前絶後であろう。

そして、アンコールはウィリアムテル序曲。この曲はチョンが好む曲のようで、オーケストラが総立ちになって演奏していた。客席の拍手も鳴り止まない。とうとう、チョンが舞台からヒラリと客席に飛び降りて、客席からオケを拍手で褒め称えるた。チョンもいいところあるなあ。

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2012年3月11日 (日)

大切な日にココロに染みわたる音楽を聴く

今日は東日本大震災の一周忌。全国各地で慰霊と復興の催しが開かれたが、私は鎌倉建長寺に出かけた。

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建長寺では「東日本大震災~1年目の祈り~」と題して、大きな催しが行われた。今日は入場料(拝観料)無料というのも力の入れようが分かる。催しでは被災者のお話や、仏教・神道・キリスト教など宗派を超えた合同法要が営まれ、最後には鎌倉在住の女優石田ひかりさんも詩を朗読した。

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実を言うと、私はこれが主眼で出かけたわけではない。フェイスブックを見ていたら、顔友&クラ友(クラシックつながりの友人)が主宰するクラシック音楽のマネジメント会社が、本日の催しに登場することを見つけたからなのである。

アズアーテイストという会社。まだ設立されて数年のマネジメント会社だが、主にヨーロッパ留学帰りの若手女性アーティストを擁し、積極的に活動している。特に各地の寺院でのコンサートを手がけているほか、震災後は被災地に出かけるなどチャリティコンサートにも熱心で、大変立派な活動をされている。

http://www.azartist.jp/01what/what.html

昨年秋も台湾の若手二胡奏者とのコラボレーション(大震災復興祈念)が表参道であり、ご招待いただき聴きにいったが、大変素敵なコンサートであった。

http://muko-dono.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-22ad.html

本日は曹洞宗の若いお坊さん達有志による復興支援の組織「スジャータプロジェクト」が主催するチャリティーコンサートである。演奏会場である建長寺の法堂の天井には小泉淳作による「雲竜図」が描かれている。

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出演者は以下。

津軽三味線:福居一大
中国琵琶:シャオ・ロン
キーボード:城之内ミサ
弦楽カルテット:アズアーティスト

前半は津軽三味線の福居さんとアズの皆さんの演奏。アメージンググレイスやジュピターが、ストリングスと三味線の掛け合いで美しく演奏された。そして、津軽三味線といえばこれ、じょんがら節がソロで演奏された。津軽三味線をナマで聴くのは初めてだが、福居さんはコンクールで優勝した実力者。素晴らしいテクニックと胸を打つ迫力には圧倒された。

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後半はユネスコ平和芸術家の称号を持つ城之内ミサの登場。この称号は世界でも50人、日本人でも3人程度しかいないという。彼女はキーボードを弾きながら指揮をしていたが、演奏は彼女の作曲による美しい曲。中国琵琶のシャン・ワンが凄い。日本の琵琶はバチで弾いて演奏するが、中国琵琶は素手。クラシックギターの演奏に近い。しかし、音色は力強く、そして哀愁を帯びた甘い香りがする。トレモロの繊細さも素敵だ。

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アズアーティストの皆さんはあまり演奏の表に出ることは無かったが、ソリストを優しく包み込む名伴奏振り。時折ソロを聴かせてくれたが、皆さん技量も確りしていて音楽も容姿も美しい!

でも、お寺のお堂の寒いこと。扉は開けっ放しだから風も吹きさらし状態。そんな中で、ステージ衣装で頑張るアズの皆さんには、本当に頭が下がります。マネジメントをされている門ゆりさんに演奏後ご挨拶をしたら、アズの皆さんがたは、お寺だけに「修行」のつもりで演奏しているのだと。聴衆も底冷えがして寒かったが、被災地の方のことを思うと、これくらいで根は上げられない。

門さんは、「美しすぎる」マネージャーであります。

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震災後一年という区切りに、なにも出来ない私達だったが、建長寺の追悼式で祈ることが出来、またチャリティコンサートで微力ながらお役に立ててよかったと思う。お堂は寒かったが、我々の心はとても暖かく、そして気持が熱くなるのを実感したメモリアルデイであった。

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2011年12月26日 (月)

世界一演奏の難しい第九とは

25日、今年の第九の初日を歌った。コバケンこと小林研一郎指揮、日本フィルハーモニー、@サントリーホールである。

ご存知のように、日本ほど第九が愛され、数多く演奏される国はない。だから、日本のオーケストラ、日本人のソリスト、日本人の合唱が世界で最も上手い第九の組み合わせ・・・などといわれるほどである。中でもコバケンの演奏回数は推定だが500百回を超えてダントツなのではなかろうか。

ところが、コバケンの第九こそ、合唱を含む演奏者にとって最も演奏が難しい第九だと思うのだ。それは、コバケンの解釈がとても奥深いからだ。緩急自在のテンポの揺れ、デューナミクの振幅、歌詞の解釈などなど、どれをとっても良い意味で他の指揮者の追随を許さない。すなわち、演奏者に対する指示や期待のバーが高いのだ。日本フィルはプロだし何百回も一緒に演奏しているから、勘どころは押さえられるが、我々合唱団はアマチュアだから、付いてゆくのに必死である。

さて、今日の第九はどうだったのか。第一楽章から、実に心のこもった指揮ぶりで圧倒された。「炎のコバケン」という愛称もあるくらい、常に熱い指揮をするのだが、今日は格別に思い入れが強いような気がした。いつも発せられるうなり声が影を潜め、全身全霊を音楽に捧げるといわんばかりの、力の入った演奏であった。彼の第九はベートーヴェンの第九ではなく、コバケンの第九である・・・・などという人もいる。しかし、今日の演奏は、まるでベートーヴェンが彼に乗り移ったような、いやベートーヴェンとコバケンが一体化したような演奏ではなかったか。聴いていて思わず胸が熱くなる。我々自身が高揚してゆくのが自覚できる。合唱団の私の同僚は聴いていて「涙が出てきた」ともらしていた。

合唱の出来は歌っている本人にはなかなか分からない。ゲネプロで、コバケンから厳しい指示も飛んだが、本番は気持ちよく歌えたので、悪くはなかったはずだ。ただ、サントリーホールのP席で歌うと、指揮者との距離が遠いうえ、階段の傾斜がきついので、合唱としてのまとまりを取りにくいように思う。合唱にとって難しいホールなのだ。

26日は横浜みなとみらい、27日はオペラシティと三日連続で合唱を歌う。コバケンの思い描く第九の世界、ベートーヴェンが第九に託した思いに、一歩でも近づくころができるよう精進したいものだ。

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2011年9月 4日 (日)

スタバで待ってる!

スタバで待ってる!

今日はサントリーホールに三菱ダイヤモンドコンサートを聴きにいった。三菱グループ各社の合唱団、特に銀行、電機、地所の三社の合唱団がコアなのだが、ほぼ2年に一度オーケストラ付きの大曲を採り上げる。

三菱グーループという成り立ちや、丸の内合唱団と団員がだぶることもあり、出演者にも観客にも顔見知りが沢山いる。事前に会場でお会いしましょうと約束したオバチャマがいたので、終演後サントリー1階の「スタバで待ってる!」と伝えて席に着いた。

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ドヴォルザーク作曲のこの宗教曲は私にとって初物。1時間半に及ぶ大曲だが、非常に聴き応えがあった。この歌詞に曲をつけた作曲家は600人にも及ぶといわれるほどの人気曲(歌詞)で、私もペルコレージヤロッシーニが作曲したものは聴いている。

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これほど人気を博しているのは、主人公が聖母マリアであることが大きいのだろう。欧州キリスト教社会においては、父なる神が厳然と聳え立つが、反面人々の心の拠り所であり、慰めでもある母なる神を聖母マリアが代表しているのだ。十字架にかけられたイエズス・キリストの足もとで、聖母マリアがわが子の死を嘆く・・・という構図は、キリスト者であれば万人の胸を打つものに違いない。

ドヴォルザークの同曲は予想に反して、極めて振幅の大きな劇的なものだった。ドヴォルザークといえば、超有名曲「新世界」の第二楽章のように、民謡調の親しみやすい旋律を思い出すし、この宗教曲の中身からして、センチメンタルな曲想が想像された。しかし、第一曲からして極めて劇的で、合唱全開の迫力満点さには度肝を抜かれた。

もっとも、第4曲や6曲のように、叙情的な親しみやすいメロディーはやはりドヴォルザークならではのもの。また、全曲を通じて、民族色溢れるリズムや音色は、クラシック音楽の本流である西欧作曲家とは一線を画し、大変ユニークな音楽となっている。

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指揮は、ベテランの域に達しつつある広上淳一。ある時は操り人形、またある時は蛸踊り(そういえば顔も似ている)のような腕の動きがユニークだが、表現される音楽は、メリハリが利いて、大変オーソドックスなもの。謙虚な人柄が滲み出てくる演奏でもあった。

ソリストも上々。なかでも吉田浩之の美声にはいつも酔いしれる。日本を代表するリリコ・テノールだが、彼が歌いだすと宗教曲もオペラの世界に転じてしまう。まあ、ドヴォルザークも自身のオペラでは成功しなかったが、ヴェルディに心酔していたようだから許されるのだろう。

合唱も健闘していた。なにせ総勢200人からを纏めることだけでも大変。もちろん、欲を言えばきりがないが、アマチュアの合唱にとってソプラノの天上からの高音は永遠の課題であろう。男声はテノールが終曲まで美しい声をキープできていて聴き応えがあった。終曲にはアカペラの部分があるが、合唱団の聞かせどころだろう。果たしてバランスのよさと迫力には圧倒された。

いけない!

この曲の名前を言うのを忘れた。曲名は冒頭の「スタバで、待ってる!」・・・・いや「スタバト・マーテル」(笑)。終演後、スタバで家内が連れてくるオバチャマを待ちながらアイス・チャイで喉を潤した。お後がよろしいようで。

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2008年7月30日 (水)

真夏のトナカイ

久しぶりにトナカイに行きました。オペラサロン・トナカイです。http://www.opera.co.jp/

丸の内合唱団の仲間たちとです。皆さん、トナカイは初めてで、とても楽しんでいただけたようです。出演者は前川朋子さん(sop)、渡邊史さん(sop)、小城龍生さん(ten)、そしてピアニストの浅海由紀子さんです。

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前川さんは以前からのファンでマイミクさんでもあります。予め聴きに行きますとお伝えしておいたら、「いい歌冷えてます・・・」と返事がきたので、私からは「トゥーランドットのTu che di gel sei cinta「氷のような姫君の心も」とか、
あるいは、涼しげな水の女神ルサルカの「月に寄せる歌」なんかどうでしょうね。」とお返ししました。 そうしたら、本当にルサルカをとっても感情豊かに歌ってくれたのです。感激!彼女は名前が月×2つなので、これをもち歌にしたいと言っていました。曲想も前川さんにピッタリですね。青いドレスもとてもお似合いでした。ドヴォルザークのメロディは非常に親しみがわきます。有名な「新世界」も聴き様によっては日本の民謡に似ていて、素直に耳に入ってきます。

この日はほかにも嬉しいことがありました。渡邊さんの歌を聴いたのは本当に久しぶりですが、声に艶がのってきてスケール感もアップしたような印象です。オペラの世界でも活躍しているのですね。偶然と言うのは、渡邊さんは某プロ合唱団でも歌っていらっしゃいますが(ラフマニノフ晩祷)、一緒にトナカイに行った合唱団の仲間が、その某プロ合唱団の姉妹合唱団で一緒に歌っていたのです。

極め付きは、ピアニスト浅海さんとのご縁。やはり一緒に行った仲間が別の合唱団でも歌っているのですが、なんと浅海さんが専属のピアニストだったんです。これには一同驚き!以前、ブログでも書きましたが、私の周囲ではこうしたご縁が多いのですが、またしても「何か」を呼び込んだのでしょうか?!

そうそう、テノールの小城さんも張りのある美声を目イッパイ聴かせてくれました。この日は我々マルガツが聴きに来ているので前川さんが配慮してくれたのか、客席と一緒に「夏の思い出」を歌うことが出来ました。本当によい思い出になりました。

エンディングはいつものように、「メリーウィドウのワルツ」。何回も聴きに来るうちに、この歌詞覚えてしまいました(笑)。

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2008年6月14日 (土)

紫陽花と涙のブラームス

今日は梅雨の中休み。鎌倉の成就院の紫陽花と鎌倉交響楽団の定期コンサートに行きました。

002_2 ジモティーですが、江ノ電に乗るのは久しぶり。旬の紫陽花目当ての観光客で小さな電車はすし詰め状態です。江ノ島駅乗車で極楽寺駅で降ります。極楽寺も紫陽花の名所ですが、時間が無いので徒歩3分の成就院へ。鎌倉の紫陽花といえば、北鎌倉の明月院がとても有名ですが、近年クローズアップされているのが鎌倉西部の長谷寺と成就院。長谷寺は観光誘致?のため紫陽花を植えたと聞きましたが、この成就院はかなり昔から参道に紫陽花が植えられています。つまり、明月院は境内、成就院は参道ということで、成就院の境内は狭いし見るべきものは見当たりません。

014 でも、参道の紫陽花は素晴らしいです。成就院は海に面した高台にあるのですが、そこにいたる参道の両脇に紫陽花が咲き誇っています。もともと紫陽花は可憐なイメージなのでしょうが、帯状に繋がる紫陽花群は豪華ともいえます。しかし、凄いですよね・・・・この人の帯。午前中でこの混雑ですから、午後は入場規制が出たのではと思います。

005 そうそう、ここの見所は参道を登りきって後ろを振り返ると七里ガ浜の海岸が見えることでしょう。鎌倉の海と紫陽花の取り合わせは、景観的にとても魅力的です。今日はちょっと霞んでいましたが、天気がもっとよければ絶景です。うーん、やっぱり来て良かったなと実感。

012 タイミング的には紫陽花の花も丁度見ごろ。色とりどりの花々に思わず見とれてしまいます。紫陽花の花言葉は「移り気」。たとえ移り気でも、こうしてさわやかなパステルカラーのバリエーションを見せてくれるなら許します(笑)。日本原産ですから、まことに誇らしく思います。

その後、江ノ電・横須賀線を乗り継いで鎌倉芸術館へ。鎌倉交響楽団の91回定期コンサート。以前投稿しましたが、この由緒ある実力アマチュアオケのコンサートマスターを会社の後輩が勤めているのです。曲目はウェーバー「オイリアンテ序曲」、プロコフィエフ「ピアノ協奏曲3番」(ピアニスト芹澤桂司)、そしてブラームスの4番シンフォニーがメインです(指揮:角岳史)。先の2曲も良かったけれど、ナント言っても聴きものはブラ4。NHKハイビジョンの迷?番組、名曲探偵アマデウスでも採り上げられていました。この番組、名曲のアナリーゼを面白おかしく説いてくれるユニークな番組です。ブラ4の時の「オチ」は「ブラウス4枚干しといて」でしたが、さすがNHK、ブラジャーじゃないところが受信料不払いに対する苦悩がにじみ出ています。閑話休題。

001 ブラ4は彼のシンフォニーの中で一番好きな曲。あの第一楽章冒頭のすすり泣くような「3度のため息」を聴いただけで心が熱くなります。この部分は、技巧的には容易ですが、揺れ動く男の哀愁をどれだけ思い入れを込めて演奏するか、とても難しい部分だと思います。おそらく、指揮者の技量も含めて、出だしを聴いただけで、全曲の出来を推し量れるキーポイントでしょう。考えてみると、ブラームスの交響曲、とりわけこの4番は極めて私的な曲のような気がします。先人のモーツァルトやベートーヴェンと違って、宇宙や神、自然と人間、あるいは善悪といったような概念的な発想が感じられません。ブラームス個人の私的な体験、思想、気持ちの現れが極めてエモーショナルな曲想に乗って展開されます。男の哀愁といえばかっこよいですが、ウジウジした中年~初老男の煮え切らない気持ち・・・・・というと実も蓋もありませんが、ブラームスがエライのはそうした私的感情を、世の中の男たちが共感して涙を流すレベルにまで高めたことだと思います。

ちょっと個人的感想を言い過ぎました。この日の鎌響は素晴らしい演奏で、世の男たちの期待に応えてくれました。もちろん、管楽器のバランスとか弦のピッチの不揃い、とかもう少し・・・というアマオケ固有の部分はありますが、管楽器などは随所にはっとさせる美しい演奏をしてくれました。弦も素晴らしかった。弦楽器演奏者にとって、男の哀愁を紡ぎだすという点においては最高の楽曲ではないかとさえ思います。特に、コンマスは心底共感しきった弾きぶりで、中年男(笑)の哀愁を十二分に描き出していてとても感動的でした。アンコール曲でコンマスのヴァイオリンの弦が切れてしまったことがそれを良く物語っています。終楽章に至ってはオーケストラ全員がひとつの楽器になったような高揚感伴う演奏。思わず鳥肌がたち、涙がにじみでてきました。ありがとう鎌響!

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2008年2月11日 (月)

イケメン3連チャンとアクトリ

イケメン3連チャン?アクトリ?・・・・・。意味不明のタイトルが多い私のブログですが二つともコンサートです。昨日9日土曜日はコンサートの連チャンでホール(17時10分終演)→錦糸町駅・・・電車・・・・・本郷台駅→ホール(18時30分開演)と走りに走りました。

Photo_2 イケメン3連チャンとは新日本フィルの定期のこと。イケメンの指揮者が連続して登場するという意味です。いくらキャッチが大切とはいえ、ここまでしないとお客さん呼べないのか・・・というくらい衝撃的な(笑)タイトルですね。中心となるのはご存知新日本フィル音楽監督のアルミンクですが、この日はアルミンクと同世代のマルク・アルブレヒトが指揮をしました。曲目は「さまよえるオランダ人序曲」「デュティユーのチェロ協奏曲」(チェロ:ベルリンフィル首席のクヴァント)、「英雄の生涯」です。アルブレヒトはイケメンかどうかは別として、エネルギッシュな指揮ぶり。踊るように指揮します。アルミンクが貴公子然としているのに対して、野生的といえばよいでしょうか。ただ、音楽はハッタリのないオーソドックスな作り方です。オペラの経験が豊富で、ワーグナーは勿論、R・シュトラウスも情景描写に長けています。英雄の生涯はシュトラウスが自分を英雄にたとえた「はなもちならない」作品ですが、ホルンが8本も登場するゴージャスな曲。トロンボーンの首席がこの日はユーフォニウムを吹いている・・・・・など、見ていても楽しい曲です。それから、オランダ人序曲は、昨年観たウィーン国立歌劇場の小澤復活第一夜を思い出して懐かしかった。序曲って、オペラの名旋律が上手くちりばめられていて聴いていて楽しいですね。そうそう、ついでに言うと、先日家族が借りてきた「パイレーツ・オブ・カリビアン」を視ていたら、ここに登場する幽霊船はまさに「オランダ人」の物語を下敷きにしているんですね。

Photo さて、お次のお題はアクトリ。冬といえば鍋、鍋といえばアクトリ・・・・・・じゃなかった。アクアトリニティという女性三人のトリオなんです。写真をごらんあれ。新日本フィルがイケメン3連チャンなら、こちらは美女3連チャンでしょうか(失礼しました)。バイオリン、チェロ、チェンバロという変わったアンサンブルです。バイオリンの礒絵里子さんは以前近所に住んでいらして(その後私が引越し)、そのころからのファンでコンサートもかなり聴いています。また、水永牧子さんは実演を聴く機会は無かったのですが、バロック音楽が好きな私としては関心を持っていました。お二人ともこのブログの「お気に入り」に入れさせていただき、時々コメントを書かせていただいています。そのお二人が、偶然にもアンサンブルを組むというのでコンサートに駆けつけたのです。なお、水谷川さんは家内が鎌倉円覚寺でのコンサートで聴いたことがあったそうです。そうそう、アクアトリニティという名前は三人の姓が水に関係があることからつけられたもの。第一部のステージ衣装は水色が基調で、なるほどなるほど。

舞台から4列目という至近距離で聴きましたが、ホールの響きも大変よく、ナマ音の迫力に圧倒されました。礒さんのバイオリンはますます磨きがかかり、聴くたびに素晴らしくなっています。シャープな持ち味の上に、艶やかな色彩が加わってきたような気がします。水永さんのナマは初めてですが、典雅なチェンバロの響きにうっとりです。当然、音量は小さいはずなのですが、演奏方法に工夫もしたのでしょう、ほかの二人に負けない存在感が感じられました。会場で「イングリッシュ・ガーデン」というCDを買い求めましたが、イギリスルネッサンス音楽の小品がちりばめられいて、まさに英国庭園を逍遥するかのような癒しの空間を提供してくれます。そして、水谷川さんのチェロ。私はチェロをこんなに間近で聴くのは初めてですが、迫ってくる音の波に包まれる幸せを感じました。いや、距離は関係ないのでしょう。曲に感情を移入して伸びやかに音を紡ぎだす、水谷川さんの音楽性にうたれました。それにしても、チェロって素敵な楽器ですね。

長くなりましたが、演奏曲の感想を少し書きます。ヴィヴァルディからピアソラまで、大変意欲的な選曲。特に印象に残ったのは、①亡き王女のためのパヴァーヌ:ラヴェルの擬古風な曲想にチェンバロの響きがぴったり。②ゴッドファーザー:ニーノ・ロータの名曲を加藤昌則さんが編曲。バイオリンとチェロの切々たる旋律が胸を打つ編曲も素晴らしいが、その演出がユニーク・・・・・観た人ではないと分からないですね。③ドヴォルザークのスラヴ舞曲:チェンバロがツィンバロン(ハンガリーですが)風の響きをうまく出していた。④ピアソラ3連チャン:ただただ、圧倒されました。というわけで、なにより三人が楽しく、そして時には鬼気迫るテンションで演奏していたのがとても嬉しかったです。ファーストコンサートでしたが、これからも是非是非続けていてほしいものです。次回は、三人それぞれの独奏も聴かせてくれると良いと思います。それから、観客の位置によっては、チェンバロの水永さんが隠れてしまうので、立ち位置にひと工夫ほしいものです。

コンサート終了後、サイン会がありました。新日本フィル定期のあった錦糸町で買い求めたお菓子(三人分!)をプレゼントして、色紙にサインをしてもらって霙が降る中、暖かい気持ちで家内とホールを後にしました。

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