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2013年3月23日 (土)

直野資退任記念演奏会を聴く 

藝大教授の直野資先生の退任(退官)記念演奏会を聴きに行った。

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直野先生は私が所属(主催)する合唱団の公演で3年間お世話になった。合唱団は丸の内フェスティバルシンガーズ(MFS)で、毎年秋に丸ビルで開催されるイベント「藝大アーツin東京丸の内」にオペラのコーラスとして出演させていただき、ご指導いただいたのだ。

直野先生は、日本を代表するバリトン歌手であり、わが国オペラ界の大御所的存在である。普段、我々アマチュアが接することなど出来ないのだが、ご指導までいただけたのは藝大アーツの企画のおかげである。

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直野先生が練習の場に立ち会うだけで、プロのソリスト達が緊張するのが手に取るように分かる。しかし、一方で我々のようなアマチュアに対しては、とても気さくに接してくれるのだ。先生はジョーク(駄洒落)がお好きで、私も人一倍好きなのだが、二人で駄洒落の応酬をしていて、周りがハラハラしてた事もあったっけ。

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さて、直野先生が藝大を退官されるにあたっての記念コンサート。とても素晴らしかった。優れた門下生が多数集い、舞台で歌の競演をしたのだから、この上なく豪華である。門下生達は直野先生へのお礼をこめて熱唱する、その姿にも心打たれた。

第一部の終曲「ナブッコ」では、直野先生と舞台に立ったソプラノ田崎さんが涙ぐむ、といった光景も退官コンサートならではだ。トスカのテ・デウムでは、合唱に門下生が勢ぞろいした演奏は壮観。直野先生も非常に嬉しかったに違いない。藝大アーツでも、MFS合唱団が直野先生とテ・デウムを共演させていただいたことをふと思い出した。門下生で特に光ったのは、文句なしで大隅さんのトスカ、若手加藤のぞみさんのアズチェーナであったことを触れておこう。

直野先生の演奏会だから、先生についても書かねばならない。私のような分際が感想を述べること自体僭越の極みなのだが、独り言を呟くと思ってお許しいただきたい。

御歳67とのことだが、年齢を感じさせない張りのある声には驚かされる。後半はご自身も「声をなくした」と話されていたが、大変若々しい声である。そして、圧倒的な存在感。若い門下生との対比もあるのだろうが、先生が舞台に登場するだけで場面が光って見えるのだ。深い彫琢の歌唱は勿論だが、演技面の解釈も素晴らしいのだろう。顔の表情、立ち居振る舞い、日本芸能でいうところの「面のきり方」に至るまで、役柄の雰囲気が滲み出る。

この点で、やはり当たり役のトスカのスカルピアは素晴らしい。ちょっと体型もスリムになられて、悪役というよりも「チョイ悪」系のカッコよさが出ているが、息を呑む場面があった。嫌がるトスカの手をとって口付けをしようとする仕草である。単に女性の手に恭しくキスをするのではなく、いかにも下品に、口を半開きにして下唇からトスカの手を迎えるようにしてキスをしたのである。この仕草にこそ、スカルピアの品性、心のありようが象徴されているような気がした。先生は、恐るべき性格俳優でもあるのだ。

演奏会が終わり、入口でお客様を送り出す直野先生にご挨拶することができた。私を見るなり、私の肩を叩き「君も舞台で歌ってくれたらよかったのに・・・・」といわれた。もちろん、先生一流のジョークなのだが、私の肩を叩き、言葉をかけていただけるなんて、、、。先生の暖かさに接し、思いがけず嬉しく涙ぐみ、私は会場を後にしたのだった。

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