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2012年6月14日 (木)

美音に酔いしれる一夜

ちょっと前のことだが、五嶋龍&オルフェウス室内管弦楽団のコンサートを聴きに行った@サントリーホール。

会社の関係先のご招待なのだが、昔からオルフェウスCOは大好きだったし、成長した五嶋龍にも興味があった。メインプログラムは、五嶋のベートーヴェンバイオリンコンチェルト。それとオルフェウスがメンデルスゾーンのイタリア(交響曲第4番)である。

龍のバイオリン(VN)は素晴らしかったの一言に尽きる。有名なティンパニの4つの音に導かれて長い序奏が始まるが、満を持して龍が引き出した最初の音を聴いてしびれてしまった。なんという美しく艶やかな音色だろう。大昔だが、同じサントリーで聴いたシュロモ・ミンツの音色を思い出した(プレヴィン指揮ウィーンフィルという贅沢なコンサートだった)。テンポを遅めにとり、ひたすら美しく弾いてゆく演奏に心が奪われてしまったのだ。

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ベートーヴェンのVN協奏曲は古今のVN協奏曲の最高峰であることに異論はないだろう。だからハードルは高いし、生半可な取り組みではしっぺ返しを食う。無論演奏にはベートーヴェンの崇高な精神性が求めら得るから、弱冠24歳の龍にはまだ早いのかもしれない。しかし、彼のVNの音の美しさ・・・音の素直さといってもよいだろうが・・・は、足らない点を補って余りあるのだ。ひたすら美しい演奏に演奏者も聴衆も身を任せられる幸せがあった。

そもそも、この曲は「怒れるベートーヴェン」にしては、とても歌謡的で叙情的な曲だ。彼が36歳の時の作品で、交響曲第4番、ピアノコンチェルトも4番を同時期に作曲していて、いずれも叙情性に富んだ名曲。それに、このころ彼はヨゼフィーネに恋をしていたことを考え合わせると合点がゆく。

流石に終楽章ロンドに入ると、明快なリズムを刻んで心地よい演奏だった。指揮者がいないので、カデンツァにさしかかると、龍が身を乗り出すように舞台前面にせり出し、さらに興が乗る。
龍は既に立派なソリストであるが、このまま順調にキャリアを積んで偉大なヴィルトゥオーソに上り詰めて欲しい。

さて、もう一つの主役オルフェウスCOに触れないわけにはゆかない。1970年代からアメリカを起点に活躍をはじめ、指揮者を置かないことで有名なCOである。レコーディングも膨大な数に及ぶ。指揮者がいないのに、演奏は極めて整えられていて胸のすくようなインパクトを与える。ベートーヴェンの伴奏でも、極めて力感に富む立派な演奏だった。並のフルオケに引けをとらない合奏力である。メンバー一人ひとりの技巧とパワーが無ければここまでの演奏は出来まい。

Orpheus_chamber_orchestra

オーケストラとしての歴史は40年を超え、メンバーの世代交代もあっただろうが、活動を続けていること自体すごい。ただ、近年の潮流として、古楽演奏法が現代オーケストラにも影響を及ぼし、特に室内オーケストラにその傾向が顕著である。オルフェウスは古楽奏法とは一線を画し、当初のスタイルを固持しているように思えた。メインの「イタリア」にしても、演奏は本当に素晴らしいのだが、インパクトの強い古楽器奏法(あるいはそれを取り入れた演奏法)に慣れつつある聴衆にとって、彼らの演奏に物足りなさを感じた人もいたことだろう。

なお、多くを語る余裕が無いが、オルフェウスの演奏スタイルは企業経営にとって大きな示唆を与えてくれる。彼らは指揮者をおかず、演奏解釈は合議制、コンサートマスターをはじめ、各パートのトップは随時交代する・・・などなどユニークである。こうした独自の自主管理の方法論は「オルフェウス プロセス」と呼ばれ、8つの原則「権限委譲、責任の自覚、役割の明確化、リーダー役の交代、横のつながりの強化、聞く力・話す力の強化、コンセンサスの追求、熱意と目標」からなっているという。これは立派な経営学なのである。

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