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2009年12月 6日 (日)

瀧井敬子 先生のこと

このところ、瀧井敬子 先生の追っかけをやっている。

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瀧井敬子先生とは、今年の「藝大アーツin東京丸の内」でお世話になった、東京藝術大学の教授である。丸の内合唱団が参加したこのイベントについては、感激を持ってこのブログに書いたが、イベントの総合プロデューサーを務められたのが瀧井先生である。また、我らがマルガツに藝大との共演という白羽の矢を当てていただいた張本人である。

瀧井さんについては、このブログでも何回か登場いただいたが、藝大というともすると閉鎖的になりがちな象牙の塔にあって、既成概念にとらわれない素晴らしいイベントを次々と成功させているとてもユニークな先生である。その活動はエネルギッシュで、人の何倍も働いてこそはじめて事がなる・・・・といった誠心誠意を信条としておられる、まことに頭が下がる方なのだ。私などは、先生のパワーと実行力にすっかり圧倒され、瀧井門下生?として教えを請うている。

冒頭に「追っかけ」と書いたのは、先週の日曜日と今週の日曜日立て続けに瀧井さんの講演に出かけたからである。この歳で「追っかけ」もないだろうが、ご迷惑であったらお許しいただきたい。

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さて、先週は藝大奏楽堂にて「メンデルスゾーン姉弟の歌曲の魅力」と題した企画もの。バイオリン協奏曲や交響曲「イタリア」などで有名なフェーリクス・メンデルスゾーン。実は姉のファニーも音楽の才能にすぐれ、歌曲を中心に素晴らしい作品を作曲していた。メンデルスゾーン家は裕福な資産家(銀行家)であったが、当時は女性が作曲家になるなど許されなかったため、ファニーはフェーリクスの名前を借りて作品を発表していたものもあるらしい。ファニーが嫁いだ画家のヘンゼルが理解のある夫で、ファニーは次々と作品を発表し女性作曲家のパイオニアに位置づけられている。そうした、姉弟の歌曲作品を並べて聞くという楽しみがあった。

もう一つの楽しみは、フィーリクスは水彩画を趣味としていて、その作品は芸術的鑑賞に堪えられるものであったこと(つまり玄人はだし)。この演奏会では、彼の水彩画がプロジェクターで背景に映し出されてとても美しいものであった。瀧井さんと国立西洋美術館の佐藤直樹先生とのトークも織り込まれ、知的好奇心を大変そそられた。まさに、宮田芸大学長も言っておられた、音楽と美術の融合、コラボレーションであり、瀧井さんならではの企画であった。出演者も多田羅さん、永井さんをはじめ藝大教授陣を挙げての豪華なもの。晩秋のひと時を豊かにすごすことができた。

本日の瀧井さんの講演というのは、「鎌倉漱石の会」でのレクチャー。瀧井さんとのメールのやり取りのなかでこのレクチャーを知り、私が鎌倉在住であることもあって、瀧井さんに頼んで参加させてもらった。鎌倉漱石の会は夏目漱石のファンが自主運営している会で、本拠を北鎌倉円覚寺の塔頭「帰源院」に置く。これは、漱石が若い頃参禅し逗留していたことによるものである。会のメンバーは全国から300人も在籍しているようで、開催も今回が95回目。いかに漱石のファンが多いかが分かろうというもの。お弁当とお饅頭、甘酒つきというのも嬉しい。

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12月9日が漱石の命日であることから、まず住職による読経から開始。円覚寺は臨済宗だが、このお経が面白い。臨済宗は法要の途中で坊主が「喝!」と怒鳴ることで知られているが(以前このブログでも書いたような気がする)、本日は「喝」はなかったものの、臨済宗特有の「もりもり、もきもき・・・・」といった笑のとれるお経なのである。

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さて、そのあとお待ちかねの瀧井先生の講義。題名は「『野分』に登場するバイオリニスト「冬田」のモデル」。先生は著書「漱石が聴いたベートーヴェン」など、日本の西洋音楽導入期の事情に大変お詳しい。漱石の著書「野分」に登場する女性バイオリニストは誰か・・・・というちょっとミステリーめいた題材であった。野分に登場する音楽会のプログラムを見れば、演奏者は特定できるのだが、ずばりその人は「幸田延」。芸大の前身である東京音楽学校の教授というか、わが国最初の音楽留学生であり、かの明治の文豪幸田露伴の妹に当たる。

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瀧井さんは、幸田延を軸に、露伴、鷗外、漱石などの文豪や滝廉太郎や寺田寅彦(漱石の友人)を絡ませ、明治期の音楽の潮流を大変楽しく、面白くレクチャーしてくださった。特に興味深かったのは、素晴らしい音楽的才能を発揮し、留学そして藝大の教授に上り詰めた幸田延が、女性であるがゆえにその職を追われ晩年は不遇であった・・・・というくだり。もっとも彼女は「上野の西太后」と揶揄されるほどの権勢を振るったとの見方もあるようだが、時代や洋の東西を異にするものの先に述べたファニー・メンデルスゾーンと一脈通じるものがあるのが不思議であった。

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面白い話をもう一つ。昨日、このレクチャーに備えて、ちょっと予習をした。以前録画しただけで観ていなかったNHKハイビジョン番組「幸田家の人々」(2005年放映)があるのを思い出し、取り出して再生したのである。この番組は、一言でいうと幸田露伴、文、玉、奈緒と続く幸田家のDNAがテーマなのだが、その中に音楽家の幸田延が登場する場面がある。幸田家末裔の奈緒が藝大を訪ねるシーンなのだが、そこになんと瀧井先生が出てこられたのだ。予期せぬことに本当にビックリした。まさに面白いほどの偶然である。私の得意の「シンクロニシティ」か・・・・と友人に話したら、友人はそういうのは「セレンディピティ」というのだと教えてくれた。serendipity・・・・辞書によれば、掘り出し物を偶然見つける能力、予期することなく大きな発見をする能力のことをいう。セレンディピティ・・・・・なんて素敵な言葉なんだろう。私にもその能力があるのだろうか?教えてくれた友人に感謝。

円覚寺は紅葉もなかなか綺麗で、境内は人でごった返していたが、ここ帰源院は全国から集まった漱石ファンで優雅な知的雰囲気が漂っていた。

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