弦楽合奏の名曲
弦楽合奏の名曲を聴いた。
弦楽合奏の名曲といえば、モーツァルトの「アイネ・クライネ」がまず頭に浮かぶだろうが、私的にはチャイコフスキーの「弦楽セレナード」に止めを刺す。流麗でメランコリックな旋律は、いつ聴いても胸が熱くなる。もっとも、チャイコフスキーはモーツァルトが大好きで、弦楽セレナードを書くきっかけとなったのが「アイネ・クライネ」だというから面白い。チャイコフスキーには「フィレンツェの思い出」という隠れた名曲もある。通常は弦楽六重奏で演奏されるが、弦楽合奏版もあってこれまたロマンチックな佳曲。
さて、私はもともと叙情的な弦楽合奏曲が好きだが、チャイコフスキーのほかにも大好きな曲が沢山ある。同じ弦楽セレナードのくくりで言うと、ドヴォルザークの「弦楽セレナード」。これはチャイコフスキーのそれよりも前に作曲されていて、ブラームスのセレナードを手本にしているようだ。エルガーの「弦楽セレナーデ」もいい曲だ。イギリス人らしい穏やかで優しい心休まる曲だ。
グリーグの「ホルベア組曲」も素晴らしい。バロックの様式を模倣して描かれていることもあり、端正で優雅な曲。バロック音楽といえば、レスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」。この中の第三組曲は弦楽合奏で演奏されるが、特に第三番の「シチリアーナ」は有名。哀愁あふれるメロディは一度聴いたら忘れられない。
時代は下って、アメリカの現代作曲家バーバーの「弦楽のためのアダージョ」も名曲中の名曲。10分にも満たない小品だが(もともと弦楽四重奏からの編曲)、叙情と情熱を兼ね備えた旋律は胸を打つ。かのケネディの葬儀に使われて有名になった。バーバーと同じ時代のシェーンベルクが作曲した「浄められた夜」。「女が見知らぬ男に身を任せ妊娠した・・・・」云々、内容はエキセントリック?だが、音楽はうねるような情念に満ちている。シェーンベルクが無調音楽に足を踏み入れる直前の音楽である。独立した楽曲ではないが、しばしば単独で演奏されるマーラーの第五交響曲のアダージェットは感情吐露=ロマンチックの極致といってよいだろう。ヴィスコンティの「ベニスに死す」のテーマ音楽にもなった。
以上、思いつくままに挙げてみたが、どれもこれも大好きな曲で、演奏会やFMで放送されると胸がワクワクする。さて、やっと本題になるが、もうひとつ弦楽合奏の名曲を発見した。ラジオやCDでは聴いていたのだと思うが、生演奏を聴いて圧倒されたのが、リヒャルト・シュトラウスの「メタモルフォーゼン(変容)」(アルミンク指揮の新日本フィル定期)。シュトラウス最晩年の作曲だが、第二次世界大戦の終戦前後に、祖国ドイツが荒廃してゆく様を嘆き、悲しみ、絶望し・・・・その思いを託した名曲である。しかし、その音楽は悲しみから生まれる甘美ともいえる曲想が、聴く者の胸を打つ。永遠に続くかと思われる息の長い旋律が体全体に浸み込み、心を溶かしてゆく。
編成が面白い。弦楽合奏ではあるのだが、Vn10,Va5.Vc5,Cb3の弦楽器23丁が合奏ではなく独立して演奏するのである。つまりスコアが23段あるということ。シュトラウス一流の精緻な書法によるが、テクニックが表に出るのではなく、音楽として非常に豊かで悲痛な叫びが聞こえてくる名曲名演奏であった。
http://www.youtube.com/watch?v=DRbf71sdTrwアドレス貼り付けてご覧ください。
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