ユーミンエッセイ1
30数年前というから、大学三年の時の寮誌が見つかった。というか、後輩が確り保管しておいていて、それを譲り受けたのである。
私が寄稿したエッセイ「とてもまだ荒井由実のことは書けないけれども」について、何回かに分けてご紹介しよう。私の大学時代は、ユーミンといっても、荒井由実の時のことである。ですから、現在のユーミンの評価とは大きく違う部分もある。
当時の私の文章はとても上手いとはいえないが(笑)、私の青春がそこにあったことに懐かしさを感じる一方、考え方はあまり変わっていない事に驚いた。進歩がないということだろうか。それでは・・・・・・・・
彼女(ユーミン)の歌は、一口に言って「モダン」です。これには二つの意味があって、ひとつは所謂「現代的」「進歩的」な面なのですが、同時に「とっつきにくさ」を宿命的に持たざるをえません。前衛的というほどのものではないがハイブローな存在であることに間違いない。彼女の歌は、万人から好かれ口ずさまれるというタイプではないでしょう。
彼女はシンガーソングライターです。ほかに知る限りでも、五輪真弓、小坂恭子、太田浩美など多数いるが、その中でも彼女の個性はずば抜けていると思います。これは主にコンポーザーの面であり、小椋佳もそうですが、本領は歌手よりも作詞作曲家にあるのでしょう。なにしろ、私が彼女の歌をはじめて聴いた時、びっくりしてしまいました。そのサウンドの新鮮なこと。詞もそうですが、今まで聴いたことのないような新しい、それでいて素敵なメロディーなんです。
七間君(同僚)は「はじめはつまらない歌くらいにしか思っていなかったけれど、だんだんと聴かないではいられなくなってきた」と言います。私は音楽というものはすべからくそういうものだと思います。もちろん、最初の印象が素晴らしく強い曲は、一度聴いただけで忘れられない。普通の曲であっても、何度か聴いているうちに、その曲のイメージが聴く人の心にコピーされてしまう。つまり、体の中に免疫のように「音楽」を持つようになるわけです。そうなると、その曲を聴くたびに、外で鳴っている音楽と自分の体の中の音楽が共鳴しだす。外のものと内なるものが渾然となって音楽を作り上げてゆく・・・・・これが音楽の持つ「生命力」なのではないでしょうか。もっとも、こうした経験が出来るのは、ほんの一部の音楽であり、心の中にコピーされない音楽もあるわけです。ある楽曲が好きになるか、嫌いになるかというような基準は、実はこんなところにあるのではないでしょうか。
さて、なにを言いたいかというと、荒井由実の歌が素晴らしい・・・・・ということです。聴き出したら、とても何かの片手間に聴けるような曲ではありません。それに、私の場合彼女の歌がびっくりするほど速く「コピー」されるのです。元来何事に対しても保守的傾向の強い私なのですが、不思議です。もともと「好み」は簡単には説明できないものでしょう。例えば私に恋人がいて、友人から彼女のどこが好きなんだと質問されたとしてみましょう。たいていの人は、心が優しいとか、目がきれいだとか、なんだかんだもっともらしい理由をつけて言い訳をするでしょう。無論そうしたことは当たっているのですが、好きになったからこそ、後付をしたわけで、本当の答えにはならない。「好み」はすぐれて感覚的なものなのです。
そうしたことを承知で、これから彼女の歌を分析?してゆくわけです。荒井由実の歌の特徴は、リズムの新鮮さ・・・・・特にシンコペーションの使い方。それと、和音進行の面白さにあると思います。つまり、およそ歌いやすい曲とはいえないのですが、そんなところに魅力が潜んでいる。冒頭で述べた「モダニズム」が最大の魅力なのです。このエッセイでは、色々なことを言いたいのですが、彼女の曲なかで私の好きなものをいくつか選んで、そのコメントというかたちで述べたいと思います。
続く・・・・・
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