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2008年10月26日 (日)

鯨のレクイエム

二つの合唱団で一緒に歌っているIさんが出演する、合唱団「鯨」の公演を聴きにいった。

曲目はヴェルディのテ・デウムとレクイエム(東京芸術劇場、オーケストラは東京シティ・フィル)。合唱団「鯨」は40年前に故芥川也寸志が設立した歴史ある合唱団で、今回の定期演奏会が60回目だというから恐れ入る。毎年1~2回オーケストラつきの合唱曲を採り上げていて、現在の常任指揮者は黒岩英臣。黒岩は一時は修道士の道も歩んだ敬虔なキリスト教徒(カトリック)であり、宗教曲に対して共感性のある演奏が感動を生む・・・・とプログラムに書いてあった。その通り、とても誠実な指揮振りであるが、一方でデューナミクに富んだ表情豊かな音楽を作っていた。

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さて、合唱団だが、「鯨」というからには、さぞかし「ホエール」(吼える・・・笑)のかと思っていたが、大変バランスのとれた素晴らしい合唱団であった。男声合唱が立派。特にテノールがよく伸びる声を出している。惜しむらくは、声の均質さがいまひとつで、個人の声が聞こえてきてしまう点。女声も聴かせるが、ややアルトが弱め。ソプラノはアインザッツに乱れが生じたり、出だしの高音部が上がりきらない(これは怖くてなかなか出せないものですが)箇所が散見されたのが残念・・・・・・・なんて、自分を棚に上げて失礼極まりない評価だが、合唱を始めてからほかの団体の歌を聴くと、とても勉強になるのです・・・・しかし、子音の発音も確り統一されていて心地よく、トータルではよく訓練されたよい合唱団だな、と感じた。

2曲ともヴェルディの名曲。テ・デウムは初体験だが、短いながら素晴らしい曲だと思った。冒頭にアカペラでグレゴリオ聖歌の旋律がそのまま男声合唱で歌われるのだが、聴いた瞬間に鳥肌がたつほど美しい響きなのである。混声8部(4部×2)が絡み合う難しい歌だと思うが、鯨の面々はよくこなし、感動を与えてくれた。ヴェルディはこのテ・デウムを絶対の自信作とし、死んだ時には枕の下に楽譜を入れてほしいと遺言したそうだ。いわゆるヴェルディらしくない清澄な祈りの音楽だが、晩年のヴェルディの心境をうかがわせる名曲である。

一方、レクイエムは演奏時間100分にもなろうという大曲。「怒りの日」の壮絶な合唱で有名なヴェルディの代表作である。テ・デウムとは対極的で、いかにもヴェルディらしい音楽である。特に、リコルダーレ、奉献唱、アニュスデイなど多くの部分でソリスト達が朗々と歌う様は、あたかもオペラのアリアのよう。初演時に「これはレクイエムでなく、オペラだ」と評されたことが、本当に良く分かる。素晴らしい曲だが、感動(共感)はしない・・・・・私にはどうも苦手な部類である。でも、この曲を来年秋に某プロオケ付属合唱団で歌うんだよなあ・・・・・・実際に歌ってみれば、好きになるかもしれません(笑)。だいいち、合唱もものすごく難しそうだし、大きな声を要求される。大変だなあ。

合唱は一年間?練習を積んできただけあって立派な出来。特にサンクトゥスの二重フーガは素晴らしい。独唱者もベテラン・若手を取り混ぜてレベルが高かった。まずベテランのテノール成田勝美は、相変わらず強い高音域が見事。ヘルデンテノールの面目躍如です。そして、カルミナ・ブラーナ以来ファンになったソプラノ松原有奈。豊かで澄み切った声質は本当に美しい。http://muko-dono.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_0050.htmlアルト西川裕子も健闘。アルトは普通地味な役回りだが、この曲は大変アルトが活躍する珍しい曲。バスの牧野正人も昔からのファン。藤原歌劇団の中核で活躍しているが、ちょっとトボケタ風貌が好き(歌と関係ないが)。

さて、最後にIさんのこと。彼は、私よりも年長だが、ものすごい合唱への情熱を持っている。少なくとも3つ以上の合唱団を掛け持ちしているが、まさに合唱=命という感じで頭が下がる。ご自分が声が出なくなるまでに、オーケストラつき合唱曲約40曲(日本で舞台に上がる曲)を制覇するという目標を立てているのだ。百名山と同じくらい、いやそれ以上に大変なことだと思うが、Iさんの情熱と行動力を以ってすれば、遠くない将来達成されるのではないか。Iさん、今回も感動をありがとうございました。

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