3つの「新世界」を聴く
ここ数ヶ月で3つの「新世界」を聴いた。
ドヴォルザークの交響曲第9番は「新世界」の名前でも有名な超通俗名曲である。新世界をコンサートで聴くなんて、おそらく数十年振りである。立て続けに3回連続というのも極めて異例のことだ。しかし、演奏は三者三様。これがクラシック音楽の愉しいところである。
一つ目は、3月2日新日本フィルの定期演奏会。そもそも、定演でこんな通俗曲が採り上げられるのは珍しい。定演の演目は、ちょっと奇をてらった通好みの曲が多いのだ。通俗曲はだいたい「なんちゃら名曲コンサート」といった枠で演奏されることが多い。通俗、通俗と連呼しているが、通俗曲=レベルが低いということではない。今回新世界を続けて聴き、やはり素晴らしい名曲だなと感じ入ったのである。
新日フィルの指揮はスピノジ。フランスの中堅指揮者である。演奏は才気煥発というか、何かをやってくれるのではないか・・・と飽きさせない。小柄な身体をフル回転させて、スピード感よく前進する。その新鮮さが心地よいのである。これまでの旧弊にとらわれない解釈というか、そうだからといって奇をてらうことなく、そこには新しいドヴォルザークの音楽が鳴っている。
二つ目は、翌週の3月9日、大友直人指揮@初台オペラシティホール。実はこのコンサートは一般に公開されたものではなく、大手町にある某大手総合商社主催のプライベートコンサートだったのだ。商社のお取引様や、外国の大使?など、招待客は多士済々。私はコンサートを企画・運営している人物と歌友で、お招きいただけたのだった。
もう一つ、面白いのは、オーケストラが特別なこと。「一夜限りのスペシャルオーケストラ」と銘打った企画で、在京を中心とした11のプロオケのトップ奏者を中心に臨時編成された、なんとも贅沢なオーケストラなのだ。資金的にも大手企業でなくては出来ないイベントだ。
大友の指揮は、まことにオーソドックスな演奏。我々の期待を裏切らない安堵感と豊かさがある。「新世界」とはこういう演奏で聴きたいと思わせる。実は、先のスピノジの新日本フィルのチェロ奏者がこのコンサートにも出演していた。彼とはフェイスブックで顔友なのだが、彼曰く「安心して弾けた」演奏だったようだ。一流奏者とはいえ臨時編成なので、合わせも大変だろうと思うが、アンサンブルは整っていたし、とても立派な演奏だった。
さて、最後はチョン・ミョンフン指揮の東京フィルハーモニー。この日は東フィル創立100周年特別演奏会だった(ご招待だが)。はじめて知ったのだが、東フィルは日本最古のオーケストラで、発祥はなんと名古屋の松坂屋の少年音楽隊だったという。驚きである。本来は昨年が100周年だったが、大震災で記念演奏会は今年に延期されたとの事。
チョンの指揮は、ダイナミズムに富み、鋭角的でコントラストがハッキリしていること。少なくとも、私の好みとは違うが、とても力感溢れる演奏だった。きっと、オケに対しても指導は厳しいのだろうな。東フィルは新星日響と合併したため楽団員は150人にも及ぶ、日本最大のオーケストラである。ざっと数えただけでも、コントラバスが12人もいたのだから、第一バイオリンは20挺はあったのだろうか。トゥッティで弓が林、いや森のごとく林立する様は壮観である。
この日の呼び物は、150人編成による、ラヴェルのボレロ。サントリーホールのP席に陣取ったバンダは20人もいただろうか。フィナーレの豪壮なことといったら、おそらく空前絶後であろう。
そして、アンコールはウィリアムテル序曲。この曲はチョンが好む曲のようで、オーケストラが総立ちになって演奏していた。客席の拍手も鳴り止まない。とうとう、チョンが舞台からヒラリと客席に飛び降りて、客席からオケを拍手で褒め称えるた。チョンもいいところあるなあ。
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